《ブラジル》モロ法相が現政権初の「治安計画」発表=全国5都市に治安部隊派遣=食い止めたいイメージダウン=専門家の反応は賛否両論 ニッケイ新聞WEB版より

《ブラジル》モロ法相が現政権初の「治安計画」発表=全国5都市に治安部隊派遣=食い止めたいイメージダウン=専門家の反応は賛否両論 ニッケイ新聞WEB版より

29日、ボウソナロ大統領とモロ法相(Carolina Antunes/PR)

 「ヴァザ・ジャット報道」以来、世論や政界で強い反発を受けているセルジオ・モロ法相が29日、「治安計画」を発表した。犯罪多発5市を選んで行う計画は前向きな評価を受けたが、同時に「小さくまとまりすぎ」との評価もある。30日付現地紙が報じている。
 今回提案された治安計画は、「全国暴力犯罪対抗プログラム」と名付けられている。
 計画では、殺人事件の発生率が10万人あたり40・7~88・1人と突出している、カリアシカ(エスピリトサント州)、ゴイアニア(ゴイアス州)、アナニンデウア(パラー州)、パウリスタ(ペルナンブッコ州)、サンジョゼ・ドス・ピニャイス(パラナ州)の5市に、警察官などからなる国家治安部隊(フォルサ・ナシオナル、FN)を100人ずつ配備し、4カ月間駐在させるという。
 派遣人員の8割は、現地軍警と協力して巡邏活動などを行い、残りの2割は捜査を担当する。今回の計画の諸経費には、2千万レアルが当てられる予定だ。
 これはあくまで第1弾で、2020年からの第2弾では対象となる市が増える。また、10の省庁の協力も得て、教育、文化、社会福祉、スポーツ、レジャーなどの事業も取り込むという。
 暴力犯罪を減らすための取り組みで知られる非政府団体「ソウ・ダ・パス研究所」専務理事のイヴァン・マルケス氏は今回の計画を、「対象とする市として中規模都市を選んだのは、殺人発生率のような指標の改善の度合いを見ながら進められるという点でも、連邦政府の治安政策を試してみる規模としても良いと思う」と評価した。
 だが、イヴァン氏は、「全国の殺人事件の半数は、5570市中121市で起きている。治安改善を謳った政府の治安計画の対象が5市のみというのは、余りにも小さくまとまりすぎだ」と注文もつけている。
 また、エスピリトサント州で6年間、保安局長を務めたアンドレ・ガルシア氏は、「人口40万人の市にFNが100人も配置されると、従来の市の方針や実態と対立しかねない」とし、恒常的な活動に連動させる必要を説いている。
 ヴァザ・ジャット報道以降、ラヴァ・ジャット作戦判事時代の「国民的な英雄」とのイメージが損なわれ、マスコミや世論から批判された上、政界でも傘下だった部署や人事の変更を強いられ、目玉にしていた「犯罪防止法」の下院審議も後回しにされているモロ氏としては、今回のプランで挽回したいところだ。
 新治安計画の発表は、29日に大統領府で行われた。仲が微妙になりつつあると報じられていたボウソナロ大統領も駆けつけ、モロ氏を「国の英雄」と称えたが、会場は空席が目立っていた。